「砂文字板」や「絵カードあわせ」で文字に慣れてきたら、移動五十音カードを準備してみましょう。
「移動五十音カード」のねらい
移動五十音カードのねらいは、発音と文字を結びつけて理解することです。
- 「あり」という音
- 「あ」「り」という文字
音を聞き分けて文字と結びつけ、自分で音に合わせた文字を選べるようになることを目指します。
モンテッソーリの言語教育では、書き言葉の中の「書き方」を身につける部分に当たります。
《モンテッソーリの言語教育の流れ》
話し言葉 | |
語彙を豊かにする | |
↓ | |
書き言葉 | |
書き方 | 読み方 |
●書き方の間接準備 ・音節あそび ●書き方への直接準備 ・メタルインセッツ ・砂文字板 ・絵カードあわせ ・文字ならべ ・単語ならべ ・文字探し・小さな黒板 ・なぞり文字 ・市松模様の紙 ●書き方の完成 ・清音・濁音・半濁音の紹介 ・特殊音節の紹介 |
●単語を読む ・物と名前カード ・小さいバスケットⅠ、Ⅱ ・小さい本Ⅰ、Ⅱ ・絵カードあわせ ●短文を読む ・小さい本Ⅲ ・赤いカードあそびⅠ、Ⅱ ●文章を読む ・絵本を読む ・科学的に分類された絵カード |
↓ | |
文法 | |
品詞の機能 | |
↓ | |
文章構成 | |
主語と述語 |
参考:松浦公紀「モンテッソーリ教育が見守る子どもの学び」学研,2004年6月,P94-95
このように、砂文字板、単語ならべ、実際に文字を書くということをくり返しながら書き言葉を身につけていきます。
簡単手づくり「移動五十音カード」
移動五十音カードは手づくりすることもできます。
- A4コピー用紙
- ラミネート用紙
- 移動五十音カードのケース
ケースは百均のセリアでちょうどよいものがあります。
商品名: NO.1346 SIKIRI30
縦5マス × 横6マスのケースです。
2つそろえれば、すべての移動五十音カードを収めることができます。
- エクセルで1文字2.8cm四方で五十音表を作る
- 3セット印刷して、ラミネートする
1文字1枚だと足りないこともあります。
最低3セットあると安心です。
百均のラミネートは端を残してカットする必要があります。
五十音すべてに対して端を残すのは割に合わないので、百均はおすすめしません。
家にラミネートがない場合は、「キンコーズ」や「カンプリ」でもラミネートを利用できます。
- カットする
ラミネートせずに、同じ大きさにカットしたマグネットシートに貼る、というやり方もあります。
そうすれば、ホワイトボードにひらがなを並べることもできます。
子どもや家庭の状況に合わせてアレンジできていいですね。
購入やレンタルもできる「移動五十音カード」
手づくりするのが苦手、手づくりの時間がない、という方にはお手頃価格で購入したり、レンタルしたりするのもおすすめです。
- 購入するなら
フリマサイト「メルカリ」やハンドメイドサイト「minne」「Creema」で購入できます。
- レンタルするなら
移動五十音カードのお仕事「文字ならべ」
決まった配列(五十音の配列)を伝えていくことが目的です。
「文字ならべ」の提示
提示について詳しく知りたい方は、 こちらをぜひご覧ください。
まず母音だけ取り出します。
- 「これは何かな?」と聞きながら取り出してバラバラに置く
- ケースの五十音と同じ順に並べる
- 「あ」「い」「う」「え」「お」と指差しながら発音する
- 「あ」と指差しながら発音し、並べる
- 「あ」「い」と指差しながら発音する
- 「い」と指差しながら発音して並べる
- すべて並んだら、もう1度「あいうえお」を確認する
- ケースの「あいうえお」を指差しながら発音する
- 並べた方も同様に指差しながら発音する
- 終わったら、片づける
移動五十音カードのお仕事「単語並べ」
目的は2つです。
- 単語という音のかたまりを聞き分ける
- 単語の音と文字をひもづける
特に濁音、半濁音、特殊音節を文字と連動させることを目指しています。
「単語ならべ」の提示
提示について詳しく知りたい方は、 こちらをぜひご覧ください。
- 絵カードかフィギュアを用意する
- 「これは何かな?」と子どもに確認する
- 1文字ずつ五十音カードの中から選ぶ
- 「あ」「い」「う」「え」「お」と1文字ずつ指差しながらしっかり発音する
- 「う」と指差して発音し、カードを取り出す
- 絵カードの下に並べる
- 「あ」「か」「さ」と指差しながら発音する
- 同様に「さ」「し」「す」「せ」「そ」と指差しながら発音する
- 「さ行」を確認したら、「し」と指差して発音する
- 「し」を取り出して、絵カードの下に並べる
- 終わったら、片づける
- 題材は、身近にあるものを使う
- 最初は静音のみの箱を使う
慣れてきたら、濁音→半濁音→特殊音節の順で進めていきます。
濁音
いちご、うさぎ、ごりら
半濁音
パセリ、ピアノ、ピザ
特殊音節
せっけん、キャベツ、ピーマン、ひこうき、きゅうり
移動五十音カードのお仕事「濁音、半濁音の紹介」
濁音と半濁音の絵カードを使います。
濁音、半濁音という言葉を覚えさせることが目的ではありません。
子どもだからと言って隠さずに、世の中に存在するものを紹介するということです。
「濁音の紹介」の提示
絵カードと移動五十音カードを使って、が行、ざ行、だ行、ば行を紹介します。
- 「うさ●」となっている絵カードを見せる
何の絵か確認する。
- 「ぎ」を箱から取り出す
- 「点々」を指で隠す
点々がなければ何と読むか確認する。
点々があると「ぎ」と読むことを確認する。
- 濁音を紹介する
「点々がついた文字のことを濁音と言います」
「半濁音の紹介」の提示
絵カードと移動五十音カードを使って、ぱ行を紹介します。
- 「●あの」となっている絵カードを見せる
何の絵か確認する。
- 「ぴ」を箱から取り出す
- 「丸」を指で隠す
丸がなければ何と読むか確認する。
丸があると「ぴ」と読むことを確認する。
- 半濁音を紹介する
「ぱぴぷぺぽのように丸がつく文字を半濁音と言います」
「点々も丸もつかない文字を清音と言います」
移動五十音カードのお仕事「特殊音節の紹介」
絵カードと移動五十音カードを使って、促音、拗音、長音、拗長音、撥音を紹介します。
紹介の方法は濁音、半濁音と同じです。
促音(そくおん)の紹介
例: きっぷ、こっぷ、せっけん
小さい「つ」と大きい「つ」を取り出し、大きさを比べて紹介します。
拗音(ようおん)の紹介
例: きしゃ、きゃべつ
小さい「や」と大きい「や」を取り出し、大きさを比べて紹介します。
長音(ちょうおん)の紹介
例: ひこうき、おかあさん、ぴーまん
母音を伸ばして発音するものです。
拗長音(ようちょうおん)の紹介
例: きゅうり、しょうぼうしゃ
拗音+母音で、伸ばして発音するものです。
撥音(はつおん)の紹介
例: きりん、ぱんだ
「移動五十音カード」実際やってみた結果
長男は4歳ごろに文字に興味が出てきて、おもしろがって取り組んでいました。
移動五十音カードを選んで取り出し、並べるのが楽しいようです。
やった感想として、これだけやれば文字が身につくというわけではない、ということです。
砂文字、移動五十音カード、実際に紙に書く、ということをぐるぐるくり返していました。
そのうちに書けるようになっていた感じです。
取り組み方は家庭に合わせてアレンジできそうです。
わが家では、フィギュアを揃えるのはたいへんなので、くもんの絵カードを活用しました。
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そして、やり方も少しアレンジしてやってみました。
- 絵だけを見て、五十音カードを選ぶ
- 裏返して合っているか確認する
最初は特殊音節に苦戦していました。
「特殊音節の紹介」をやると理解が進んだようです。
まとめ 「移動五十音カード」のお仕事
聞こえている言葉を文字にして表す練習になるのが移動五十音カードのお仕事です。
最初は「ひこうき」という言葉を「ひこき」と並べたり、「とらっく」という言葉を「とらく」と並べたりします。
濁音や特殊音節というものを段階を踏んで伝えていくのがポイントです。
そして、少しずつ日本語の音節を理解して表現できるようになります。