日本では幼児教育の印象が強いモンテッソーリ教育。
海外ではモンテッソーリ教育を実践する小学校、中学校、高校があります。
中には、大学でも取り入れているところがあるようです。
ここでは 日本ではまだ触れることの少ない、小学生のモンテッソーリ教育についてみていきましょう。
小学生のモンテッソーリ教育の「位置づけ」とは
モンテッソーリ教育では、「人間は24歳で発達を遂げる」という考え方をします。
《発達の4段階》
幼年期 | 児童期 | 思春期 | 青年期 | |||||||||||||||||
0 | 3 | 6 | 9 | 1 | 2 | 1 | 5 | 1 | 8 | 2 | 1 | 2 | 4 | |||||||
前期 | 後期 | 前期 | 後期 | 前期 | 後期 | 前期 | 後期 | |||||||||||||
第1段階 | 第2段階 | 第3段階 | 第4段階 | |||||||||||||||||
変容期 | 安定期 | 変容期 | 安定期 |
小学生はちょうど第2段階の安定期にあたります。
幼年期のような急激な成長はありませんが、穏やかに確実に知識を深めていく時期です。
学習内容としては、幼児期に習得した「モンテッソーリ教育の5分野」の「言語教育」「算数教育」「文化教育」を さらに深く学んでいきます。
《モンテッソーリ教育の5分野》
日常生活の練習(運動の敏感期) | ||||
↓ | ||||
感覚教育(感覚の敏感期) | ||||
↓ | ↓ | ↓ | ||
知的教育 | ||||
言語教育 (言葉の敏感期) |
算数教育 (数の敏感期) |
文化教育 (文化の敏感期) |
||
↓ | ↓ | ↓ | ||
小学校教育 |
小学生のモンテッソーリ教育の「目的」とは
モンテッソーリ教育を取り入れた小学校は、日本の小学校のような一斉学習では ありません。
子どもが1人ひとりちがうことを前提とし、子どものペースで学ぶことを重視しているからです。
教室では、先生からの提示があった上で、自分で学習したり グループで学習したりします。
先生は なるべく多くの種をまき、子どもの興味や学習意欲に応えられるようにします。
- 学ぶ姿勢(力)を身につける
- 視野を広げる
- 多様性を受け入れ、平和な社会をつくる一員となる
知識を暗記するための勉強ではなくて、生涯学び続けるための力を身につけていきます。
幼児期までは 成長の方向が 自分に向いていました。
学童期では 成長の方向が 外に向き、他者と関係を築いていけるようになります。
《誕生時》 無力(依存) |
↓ |
《幼児期》 自立 |
↓ |
《学童期以降》 相互依存(協調) |
小学生のモンテッソーリ教育「学習方法」とは
大きく3つの方法で学習を進めていきます。
- 具体から抽象へ
- 手作業の重視
- くり返し取り組む
- 具体から抽象へ
幼児期と同じように、具体から抽象へと学んでいきます。
子どもの理解の流れは 下の図のようになります。
具体 直接体験(実物) |
↓ |
半抽象 絵や写真(2次元) |
↓ |
抽象 頭の中でイメージする |
たとえば 分数の学習なら、数字での計算の前に 「教具」を使って具体を経験します。
具体である「教具」を使うことで「わかった!」と 分数を理解できる瞬間があります。
具体で理解ができたら 抽象の数字でも理解できるように 進めていきます。
- 手作業の重視
学んだことを 切ったり、貼ったり、写し取ったり、書いたり、作ったりする、という動きを重視します。
手を動かすことで 発見があり 学びを深めていくことができるからです。
たとえば アメリカの国旗を描く とします。
- まず 旗をじーっと よく見る。
- 赤と白は 何本で、星は何個あるのか? よく見て描く。
- よく見て描いたあと、どうして赤と白の縞は13本なのか?教えられる。
- 他の国の国旗の由来は?と 自ら学びを深めていく。
学童期でも、手を動かすことが 子どもの成長に欠かせない要素になっています。
- くり返し取り組む
モンテッソーリ教育の活動は、1度やったらおしまい、というものではありません。
例えば、幼児期に取り組んだ「日本地図パズル」を小学生になっても何度も取り組みます。
低学年、高学年、それぞれの段階で、子どもには新しい発見があるのです。
「北海道と九州はどちらが大きいのだろう?」「九州というけど県の数は9じゃない。どうしてだろう?」といったようにです。
くり返し取り組むことで新たな発見があったり、「わかった!」という瞬間があったりするのです。
このように、小学生になると 幼児期からさらに発展した、興味や学ぶ意欲をそれに対応する活動で深めていきます。
これは、子どもが本来もっている「成長する力」を発揮して学んでいく姿です。
まとめ 小学生のモンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育では、小学生になっても基本的な活動方法は変わりません。
- 子どもの興味に合わせて取り組む
- 具体から抽象へ、体を動かして学ぶ
ということです。
これによって、これまで積み上げてきた経験や知識をさらに深めて広げていきます。
現在の日本には、モンテッソーリ教育を実践する小学校はありません。
幼児期にモンテッソーリ教育を経験して 小学生になっても触れさせたい場合は、小学生も受け入れているモンテッソーリ教室に通うか、おうちで実践するしかありません。
おうちでは完全に実践することは難しいので、子どもの興味がある分野にモンテッソーリの要素を取り入れてみるなど工夫するのがよさそうです。
参考文献
この記事を書くために参考にした書籍などを記載しておきます。
相良敦子「お母さんの「敏感期」 モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる」文文藝春秋,1994年1月
相良敦子「モンテッソーリ教育を受けた子どもたち」河出書房新社,2009年12月
相良敦子「モンテッソーリの幼児教育 ママ、ひとりでするのを手伝ってね!」講談社,1985年6月
松浦公紀「モンテッソーリ教育が見守る子どもの学び」学研,2004年6月
松浦公紀「0〜3歳のちから モンテッソーリ教育が見守る乳幼児の育ちと大人の心得」学研,2005年6月
松浦広紀 監修「モンテッソーリ教育に学ぶ子どもの見方」