モンテッソーリ教育

子どもの自律を育てる|モンテッソーリの「線上歩行」

小さい子どもは思いどおりにいかないと癇癪を起こしたり、泣いて暴れたりすることがよくあります。

そんな子どもの内面の成長を促し、心を落ち着かせるのが「線上歩行」の活動です。

わが家も長男の癇癪に悩まされていたので、家で実践してみました。

その効果はあったのか…?

「線上歩行」についてまとめてみました。少しでも参考にしていただければ嬉しいです。

 




モンテッソーリの「線上歩行」とは?

線上歩行は、モンテッソーリの「日常生活の練習」の活動です。

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「線上歩行」のねらい

日常生活の練習の目的は

  • 手や体の基本的な動かし方を身につける
  • 身のまわりのことを 自信を持って自分でできるようになる

ことです。

ただし、「線上歩行」には動きを身につける以外にも大切な目的があります。

それは「内面の成長を促す」ことです。

ふだんの生活では、子どもの意識は外に向いています。

「自分を見つめる」という視点は日常ではなかなか育ちにくいものです。

 

そこで、自分の内面に注目する活動として「線上歩行」があります。

  • 自分の足先や手先に、意識をより集中する
    運動のコントロール、バランス感覚、集中力が増す
  • 速く歩きたいこどもにとって、自分の心をコントロールする練習になる
    意志力、自律心を育てる

精神面の成長を促すことで、「何かうまくいかないことがあったとき、すぐまわりのせいにする」ということも少なくなります

自分を律することができるようになった子どもは、間違いがあった場合は、それを認めて次に活かすことができるようになります。

こういった、今後の人生にも活かせる内面的な成長を促すことを目指しています

 

子どもからのサイン!「線上歩行」のはじめどき

はじめるタイミングは「敏感期」に合わせるのがポイントです。

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ただ歩くだけではなく、その動きをより洗練させようとしているときにはじめるのがおすすめです。

具体的な子どもからのサインはこんな感じ。

  • 自分の思い通りに、足を動かして歩けるようになってきた
  • 外で縁石の上 や 駐車場の白線の上を歩きたがる

年齢でいうと3歳ごろがはじめる目安です。

ただ、年齢にこだわらなくても大丈夫です。

子どもは そのときの成長に1番必要なものに強く興味をもちます。

子どもを観察して、ちょうどよいタイミングで 子どもに合った活動を用意していきましょう。

 



家でもできる!モンテッソーリの「線上歩行」

線上歩行はスペースさえあれば自宅でも用意することができます。

庭にスペースがあれば、石灰などで白線をひいて行うこともできます。

 

線上歩行の材料

幅2㎝ほどのビニールテープ

百均やホームセンターで購入することができます。

テープの色は、床の色とは違うものにしましょう(子どもが目で認識しやすいように)。

 

「線上歩行」の作り方
  1. 楕円型になるように床にテープを貼る

必ず直線あるようにします。

直角には曲がらず、曲線で徐々に体の向きを変えられるようにします。

家のスペースに合わせて、楕円の大きさは調整しましょう。

 

「線上歩行」の提示

はじめて線上歩行をするときは、実際に大人がゆっくりやって見せます。

この見本を見せることをモンテッソーリ教育では「提示」と言います。

提示について詳しく知りたい方は、こちらをぜひご覧ください。

 

線上歩行の提示

「今から一緒にするのは “線上歩行” と言います」と紹介します。

  1. 静かな音楽をかける

クラシックなどの静かな音楽がかけます。

子どもが集中しやすいように、歌詞のないものを選びましょう。

 

  1. 線の上をゆっくり歩く

「線の上を歩いてみるね」
「いつもの歩き方とちょっと違うからよく見ててね」
と子どもに伝えます。

ゆっくり足を前に出し、つま先とかかとをくっつける
これをくり返して歩きます。
  • 顔は前を見る
  • 前の足のかかとと後ろの足のつま先をくっつけて歩く

ゆっくり線の上を歩いて一周して見せます。

 

 

提示のポイントは

  • 1つひとつの動作をゆっくり(8倍スロー)
  • 難しいところはくり返す
  • 子どもが見ているか確認しながら進める

です。

一息ついたタイミングで 苦戦ポイントに絞ってゆっくり提示してみましょう。

 

「線上歩行」のバリエーション

最初は、何も持たずに線上歩行を練習します。

線を踏み外さなくなったら、徐々に難しくしていきましょう。

手に何かを持ちながら、足以外にも意識を集中する必要がある状態にします

 

難易度別の線上歩行
  1. 傾くもの

旗などを傾かないように腕をまっすぐのばして、その物を見ながら歩く。
90度に肘を曲げて傾かないようにする歩き方もある。

 

  1. 揺れるもの

ひもの先端を持って、ゆらゆら揺れないようまっすぐ持って歩く。

 

  1. 落ちるもの

スプーンに球体をのせて歩く。
慣れてきたら、だんだん小さいスプーンにする。

 

  1. 音の出るもの

鈴やベルなど、音が出ないように持って歩く。

 

  1. 消えるもの

ロウソクの火が消えないように、揺れないように歩く。

 

  1. こぼれるもの

コップの色水がこぼれないように、トレーにのせて歩く。

 

  1. 崩れるもの

積み木やブロックなどを積み重ねたものを持って歩く。

 

  1. 不安定なもの

頭にふきんをのせて、その上にザルを置き、ザルの中に物を入れて歩く。

 

  1. その他

砂時計など、子どもの興味をひくものを見ながら歩く。

 

手に物を持つと、足元が見られなくなります。

  • 線を踏み外さないように、足に神経を集中させる
  • 落とさないように、物にも神経を集中させる

より集中して動きを調整することが必要となってきます。

このように難易度を上げていくことで、集中力が増し、内面的な成長につながっていくのです。

 

「線上歩行」を家でやってみた結果

「線上歩行」は子どもを精神的に安定させる、とても重要な活動です。

なので、モンテッソーリ園では毎日行うことが重視されています。

ヨガの瞑想とかマインドフルネスみたいなものですね。心を整えるには、毎日の積み重ねが大事、と。

でも、家庭ではなかなか毎日はできません…。

わが家では、毎週の休日にやってみる、など定期的な習慣にして取り入れるところからやってみました。

最初は遊び感覚で。

慣れてきたら、休日以外にも自分からやるようになりました。

 

長男はイヤなことがあるとすぐに癇癪を爆発させることが多かったのですが、少し落ち着いたかな、という感覚があります

もちろん、癇癪が完全になくなった訳ではありません。

モンテッソーリ教育は魔法ではないので、うまく取り入れつつ、結局はまわりの大人の関わり方が大切です。

「これさえやれば万事OK!なんてものはない」というスタンスなので、気長に観察しながら癇癪につき合っていこうと考えています。

なかなか大変なときもありますが… ^ ^ ;

 

結論、子どもの癇癪対策で線上歩行をやってみてよかった!

これからもモンテッソーリ教育の考え方を取り入れて、子どもと向き合っていきたいです。

 



まとめ モンテッソーリの「線上歩行」

モンテッソーリ園やこどもの家を見学してまず驚くことが、その「落ち着いた雰囲気」です。

大人から強制されたものではなく、「子どもたちが自律している」という印象を持ちました。

これは日々、子どもの内面的な成長を促す活動を積み重ねてきた結果なんですね。

そんな精神面の成長につながる活動の1つが「線上歩行」。

家庭でもやってみることができるので、週1回など気軽にはじめてみるのがおすすめです。