モンテッソーリ教育。
子どものいる家庭なら 一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
棋士の藤井聡太さん、ビル・ゲイツ氏など有名人たちもこの教育を受けていた!
と、もてはやされたりもしますが、モンテッソーリ教育とはいったいどんなものなのでしょうか。
体系的に詳しくまとめてみたので紹介していきたいと思います。
モンテッソーリ教育の考案者マリア・モンテッソーリ とは?
モンテッソーリ教育は イタリア人のマリア・モンテッソーリ(1870〜1952年)が考案した教育方法です。
科学者であったモンテッソーリは 子どもを「観察」することで ある重大な発見をします。
そして 子どもが 自分の本来もっている力を最大限発揮して成長できるように モンテッソーリ教育を確立していくのです。
モンテッソーリの生涯とその思いについてはこちらの記事にまとめました。
ぜひ参考にしてみてください。
モンテッソーリ教育の基本の考え方
モンテッソーリ教育は、子どもを中心に考える教育です。
そんなこと当たり前で、どの教育方法でも子どもを中心にしている!
と感じるかもしれません。
モンテッソーリ教育は具体的にどんな教育方法なのでしょうか。
基本の考え方について みていきましょう。
子どもをどう捉えているか
モンテッソーリ教育は「科学的教育方法」と言われています。
科学とは
- 論理的
筋道を立てて物事を考え、推論する - 客観的
主観ではなく、だれが見ても納得できる立場で考える - 実証的
思考だけでなく、体験に基づく事実によって結論づけられる
という学問です。
考案者のモンテッソーリが医者であったことから、「科学的教育方法」になったのです。
そして科学の基本となるのが「観察」です。
モンテッソーリは子どもを「観察」することで、モンテッソーリ教育の基本となる、とても重要なことを発見しました。
子どもは自発的、主体的で、自らの力で育つ
子どもは大人とはちがう
これは赤ちゃんをイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。
生まれたばかりの赤ちゃんは1人では何もすることができません。
しかし、だんだんできることが増えてきます。
大人が教えなくても首がすわり、物をつかめるようになり、立って歩くようになり、しゃべるようになります。
赤ちゃんは自分の中の「成長する力」に従っているだけなのです。
強制的にやらされているのではなく、むしろ喜んでくり返し練習し、できるようになっていきます。
この「成長する力」はすさまじく、大人になってからだと苦労することも難なく習得していきます(言語の習得など)。
「成長する力」は、赤ちゃんだけでなく幼児期の子どもにも当てはまります。
モンテッソーリは 子どもが興味のあることに集中して、くり返し取り組み、満足な表情を浮かべて手を止めた様子を何度も述べています。
「モンテッソーリ教育の子どもの捉え方」は、当時の一般的な考え方とはまったく異なるものでした。
これまで | |
考え方 | ・子どもは受け身、何もできない ・子どもはすぐ飽きる ・子どもはわがまま ・子どもはいたずらばかりする ・大人が教えなければならない |
大人の 接し方 |
・大人がこうしたい、こうさせたい方向に導く ・無理やりやらせる(大人のしもべ) ・子どもには家の物を触らせない |
モンテッソーリ教育 | |
考え方 | ・子どもは自発的 ・子どもは主体的 ・子どもは自らの力で育つ ・子どもは大人とはちがう |
大人の 接し方 |
・子どもがどう行動するか観察 ・子どもの「成長する力」が発揮できる環境を整える ・子どもの「成長する力」がどこに向いているか理解する ・必要なときに必要なだけ関わる |
冒頭でお伝えした、モンテッソーリ教育は「子どもを中心とする教育」であるということがよく分かります。
このように子どもを捉えて関わっていくモンテッソーリ教育は、子どもが自らの力で育つのを助ける教育方法ということもできます。
目指す子どもの姿
子どもが本来もっている「成長する力」を最大限発揮できるように関わっていくモンテッソーリ教育。
モンテッソーリ教育を通じて 子どもはどんな姿になっていくのでしょうか。
- 自立していること
- 有能であること
- 思いやりがあること
- 責任感があること
- 一生涯通じて学び続けること
自立とは 自分で考えて行動できるようになる、ということ。
有能とは 優秀ではなく、自信をもって自分1人で できるようになること。
思いやりと責任感があるということは、すべて1人で孤独にやる というわけではなく、コミュニケーションを円滑にとりチームの一員としても行動できる姿です。
そして 知的好奇心を満たすために 主体的に学び 成長し続けていくということ。
まさにこれからの時代に必要な人物像です。
いくつかの書籍で、子どもの変わっていく様子が具体的に挙げられています。
Aちゃんは日ごろから落ち着きがなく、乱暴で聞き分けもありません。ある日ふと、そこにあった洗濯ばさみを利用した教材に目をとめ、それを手にとって、無目的に挟んだりはずしたりし始めました。そこへ先生が近寄って数字カードの数字と同じ数の洗濯ばさみを数字カードに挟む提示を見せます 。するとAちゃんは「ぼく、やる」とやり始めます。そして同じことを繰り返し始め、やりながらだんだん集中していきます。Aちゃんは、同じ作業を繰り返すうちに、指先の動かし方や色の組み合わせ方に法則を見いだし、その法則に沿ってますます没入していったのです。そして、数十分もしたでしょうか、ほっとしたようにその仕事を手放し、心から満足げに笑いました。その日の帰りのバスの時間のことです。いつもなら、バスに乗る順番に割りこんで邪魔をしたり乱暴をしたりして、お友だちや先生を困らせるAちゃんが落ち着いて、小さな子どもを親切に誘導さえしています。Aちゃんの態度は今までとは全くちがってきました。落ち着いて仕事をし、お友だちにも親切になり、人の話をじっくりと聞けるようになったのです。
相良敦子「モンテッソーリの幼児教育 ママ、ひとりでするのを手伝ってね!」講談社,1985年6月,P93-34(一部省略改変)
Bちゃんは声も態度も小さく、教室の片隅にぽつんとお客様のように座っているひ弱な子でした。ある日、ふと「豆選び」という作業を始めました。豆を同種類ごとに分けて集める作業を、長い時間繰り返すのです。それは毎日繰り返されます。一週間を過ぎたころから、「豆選び」をしているBちゃんの手つきには確かさが、態度には自信のようなものが感じられてきました。二週間を過ぎたある日のこと、Bちゃんは、「済んだ!」とでもいわんばかりの顔をしてお盆をかたづけました。その後おもむろに絵を描き始めました。それまでのAちゃんはクレヨンのもち方もおぼつかなく、線の弱々しい実にそまつな絵しか描けなかったのですが、その日は、しっかりとした力強い絵を描いたのです。気がついてみると、そのころにはBちゃんの首はまっ直ぐになり、チックも直っていました。そしてお友だちの間に入って平気で話すようになっていたのです。
相良敦子,「モンテッソーリの幼児教育 ママ、ひとりでするのを手伝ってね!」講談社,1985年6月,P.102-103(一部省略改変)
子どもは自分の興味と合うものに出会うと集中してくり返し取り組みます。
この行動は、子どもが本来もっている「成長する力」によって引き起こされます。
そして「成長する力」を発揮することで「目指す子どもの姿」に近づいていく ということです。
また、モンテッソーリ教育が目指す子どもの姿とは「平和を支える人」のことでもあります。
モンテッソーリ教育が考える平和とは
- 戦争のない世界
- 性別、国籍、宗教、考え方の違いで抑圧されない、多様性が受け入れられる世界
- だれもが健康で幸福な生活を送れる世界
を意味しています。
モンテッソーリは「教育によってのみ、この平和を達成することができる」と主張しています。
モンテッソーリ教育「子どもの活動のサイクル」
どのように子どもが本来もっている「成長する力」を発揮できるようにするのか。
モンテッソーリ教育の「子どもの活動のサイクル」を見ていきましょう。
《子どもの活動のサイクル》
子どもが発達を遂げる流れ
環境の整備 | |||||
・すべて子どもサイズである ・大人は子どもが今どの発達段階なのか観察する ・大人は最低限の手助けをする |
|||||
↓ | |||||
提示 | |||||
用具や教具の使い方を丁寧に正確に見せる | |||||
↓ | お仕事 | ||||
自己選択 | |||||
・子ども自身が興味のあるものを選ぶ ・発達の段階に合ったものを選ぶ |
|||||
↓ | |||||
くり返しの活動 | 集中現象 | この流れの発達で人格が育つ | |||
↓ | ↓ | ||||
満足感・達成感 | 正常化 | ||||
本来のよさを発揮する | |||||
↓ | |||||
全人格的成長 | |||||
モンテッソーリ教育が目指す子どもの姿 |
発達の段階と見合った活動に出会えたときに 「集中現象」が見られます。
この「集中現象」がとても重要で、「集中現象」の積み重ねによって子どもは内面も充実し、一個の人格としてトータルに発達を遂げていきます。
モンテッソーリは この「集中現象」を経験した子どもの姿を「正常化」と表現しています。
「正常化」というのは強めの言葉ですが、イメージとしては「前よりも良い状態になっていくこと」「成長につながっていくこと」と捉えるのがよいでしょう。
そしてこの子どもの成長につながっていく活動が「お仕事」と呼ばれます。
「お仕事」をくり返すことで「全人格的成長」を遂げ、「モンテッソーリ教育の目指す子どもの姿」につながっていきます。
このように、子どもが本来もっている「成長する力」を発揮できるようにするのが「子どもの活動のサイクル」です。
では、順番に「子どもの活動のサイクル」の内容をみていきましょう。
モンテッソーリ教育の「環境」づくり
子どもが成長するサイクルをつくる上で大切なのが「環境」づくりです。
「モンテッソーリ教師実践上の心得12条」の中でも1番最初に「環境の整備」が挙げられています。
教師の最も重要な仕事は、環境の整備である。このためには、個々の子どもの現在の精神的発達段階を具体的に把握しなければならない。そのために、子どもをしっかり観察するとともに、教師自身の耐えざる自己研鑽が必要である。
松浦公紀「モンテッソーリ教育が見守る子どもの学び」P.152,学研,2004年6月
物質的な環境の整備だけでなく、子どもをよく観察して関わることも環境の整備としています。
子どもの成長につながる「環境」とは具体的にどんなものか見ていきましょう。
- 子どものサイズであること
子どもが自分で自分のことをすることができます。
自分でできることは自信にもつながります。
- 活動を可能にする道具、材料
ただじっと眺めたり、触ったり、抱いたりするものはすぐ飽きてしまいます。
集めたり、ばらばらにしたり、回したり、置き換えたりなど、手を使い体を動かして活動を続けられるものが子どもの成長する力を引き出します。
- 適切な広さと保護されている雰囲気
広すぎず狭すぎない広さ。大人との距離が適切であること。
大人が見守ってくれていると感じると子どもは自由に大胆に振る舞えます。
- 子どものテンポが保証されている場
自分のリズムでやれる場所が保証されていないと成長する力は発揮されません。
- 集中を可能にする状況
まわりがあまりに騒がしすぎると、深い集中に入るのが難しいことがあります。
- 美しいこと
子どもは美しいものにひかれます。
色やツヤ、形など上品で美しいことが大切です。
- 本物であること
壊すからといってイミテーションやプラスチック製ばかり与えないようにしましょう。
本物を使うと子どもはものを大切にするようになり、良いものを味わう心が育ちます。
- 制限があること
子どものまわりにあるおもちゃや教材が多すぎると、子どもの精神は散乱し、次から次へと気移りがし、何をしても中途半端になります。
- 秩序があること
子どもは秩序を手がかりとして動きますから、秩序がないと混乱します。
教材やものの置き場所、置き方など決まっていると子どもは安定します。
- 自由に使える状況
教材や材料は、子ども自由に出し入れできる状態にしておきます。
子どもが「今やりたい!」と思ったときに、すぐ自分でとりかかることが成長につながる活動の出発点だからです。
参考:相良敦子「モンテッソーリの幼児教育 ママ、ひとりでするのを手伝ってね!」講談社,1985年6月,P.177-179
このように、子どもの成長につながる「環境」とはモノを用意して与えるだけではなく、大人の関わり方もとても重要ということです。
子どもと「環境」と大人は相互に関わり合うことが必要です。
成長 ↑ |
子ども | |
自発的活動 ↗︎↙︎ | ↖︎↘︎ 提示 | |
環境 | ⇄ 環境作り |
大人 (教師や親) |
環境との関わりによって子どもは育ちます。
大人が一方的に教えて育つのではありません。
大人は子どもが本来もっている「成長する力」を発揮できるように
- 子どもをよく観察する
- 子どもに任せる
- 子どもが自分でできる環境を整える
ということが必要になります。
モンテッソーリ教育の「お仕事」
20世紀はじめ、「子どもは遊ぶもの」とだれもが思っていました。
これに対して モンテッソーリは「子どもは働く者だ」と言い、大きな議論を呼びました。
遊びとは違うものであることを明確にするために、「働く者」「仕事」という言葉を使ったのです。
それは、遊びとは違うところで 子どもたちが集中して、自分が納得するまでくり返し取り組む姿をまのあたりにしたからです。
この集中することが子どもの発達につながることを発見し、当時の遊びとは根本的に違う「お仕事」が子どもの成長に必要であると主張しました。
日本のモンテッソーリ教育の第一人者である相良敦子先生の著書でも、遊びと「お仕事」の違いについて紹介されています。
子どもの生活では遊びは二の次で、もっとましな、高く評価できることがなにもないときだけ間に合わせに遊びます。それは大人も同じです。将棋やトランプは、暇なときは楽しい娯楽ですが、高尚な重要な仕事があったら忘れます。
ところが幼児は、いつも高尚な重要な使命をもっています。(中略)子どもは、絶えず成長しようとしていますから、発育の手段になるすべてのものは子どもをひきつけますが、他愛もない遊びごとには冷淡にさせます。
出典:『モンテッソーリの幼児教育 ママ、ひとりでするのを手伝ってね!』相良敦子 著
つまり、「お仕事」と遊びの違いをまとめるとこのようになります。
《モンテッソーリ教育の考え方》
- お仕事
子どもの全人格的発達に貢献する
集中して取り組む状態を引き起こす
- 遊び
お仕事がないときにする
遊びによって子どもの情緒が安定したり、発想力、試行錯誤する力がついたりします。
しかし、モンテッソーリ教育では「お仕事」は遊び以上に子どもの成長にとって必要なものということです。
子どもが成長するために必要なものは子ども自身が分かっていて、それが興味としてあらわれます。
そして 子どもの1番興味があることに出会ったときに行われるものが「お仕事」なのです。
モンテッソーリ教育の「用具」と「教具」
モンテッソーリ教育の「お仕事」で使う道具のことを「用具」や「教具」と言います。
- 用具
日常生活の練習で使う道具
- 教具
感覚教育、言語教育、算数教育、文化教育で使う道具
モンテッソーリ教育の考え方に基づいた特徴ある形のものが多い
「用具」や「教具」の特徴は「困難の孤立化」です。
難しいところを1つだけ取り出して取り組めるようにする
発達中の子どもの脳は、いろんなことをまとめて伝えても理解できません。
1つだけ取り出して伝えると伝わります。
このように、「用具」や「教具」は子どもの発達段階を考えて作られているのです。
使うときには ポイントをおさえておく必要があります。
子どもに合った時期や使い方を把握しておく
なぜなら、子どもが本来もっている「成長する力」を発揮するために「用具」や「教具」が大きな役割を果たすからです。
子どもの興味が向いている時期に、興味に合った「用具」や「教具」を使わないと最大限の効果が発揮されません。
使い方も同様で、「用具」や「教具」の使い方を知らないと子どもの成長する力を最大限には引き出せません。
子どもの興味と「教具」が合っている = 子どもの成長する力が向いている
・数字に興味が出てきたから算数教具を環境の中に入れてみる
・やって見せたり、声かけをしてみる
・自分でやりたいと思ってやる → 成長する力が最大限発揮される
子どもの興味と「教具」が合っていない
・4歳になったから算数教具をやらせる
・興味がないとイヤになる
では、どんな時にどんな「用具」や「教具」を用意すればよいのでしょうか。
具体的な「用具」や「教具」については後述の「モンテッソーリ教育の5分野」でご紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
モンテッソーリ教育の「提示」
モンテッソーリ教具は 好きなように遊ばせる、というわけではありません。
まず大人が子どもを「観察」し、その子どもの興味が向いている「教具」に誘うところから始まります。
「教具」の使い方を やってみせることを「提示」といいます。
言葉ではなく 動作で教えます。
- まわりに気が散るものを置かない(子どもに集中して見てもらう)
- 教えたい行為を一つだけ取り出す(つかむ、置く、など)
- その行為を構成する動作を分析する(つかむとき どう腕を出して どの指から触っていくか)
- 一つひとつの動作を はっきり、ゆっくり、正確に示す(普通のスピードの8倍スローで)
- 話しかけるときは動作を止める、動作を見せるときは話さない
- 難しそうなところはくり返す
「提示」のあと “ やってみる? ” と 声をかけます。
やるかやらないかは 子どもに任せます。
強制はせず、やらないときは片づけます。
「教具」を使うところだけでなく、誘いから片づけをするところまでが「提示」です。
また、「提示」は まったく同じように真似させることが目的ではありません。
子どもがどのようにしたらよいか分かるために「提示」が行われます。
さて、「提示」がおわって いよいよ子どもが自分でやってみる!となったとき。
ポイントを意識しながら見守っていきましょう。
ついつい口や手を出して 訂正しそうになるのを我慢です。
子どもが「お仕事」をするときのポイント
- 子どもがやっているところを訂正しない。やり終わってから もう一度「提示」する。
- くり返し教える。1回「提示」して終わりではない。
- 自分からやりたいときに やらせる。自己選択が成長の最初の段階。
子どもが興味をもつ時期を見逃さずに、こういった「環境」を提供して見守っていきましょう。
モンテッソーリ教育が考える「子どもの発達」
それは「発達を遂げなさい」ということだ。
モンテッソーリは 子どもたちを「観察」することで、子どもの発達についても 当時の教育方法とは まったくちがった考え方を示しています。
発達の4段階
モンテッソーリが考える「発達の4段階」は こちらの図のようになります。
《発達の4段階》
幼年期 | 児童期 | 思春期 | 青年期 | |||||||||||||||||
0 | 3 | 6 | 9 | 1 | 2 | 1 | 5 | 1 | 8 | 2 | 1 | 2 | 4 | |||||||
前期 | 後期 | 前期 | 後期 | 前期 | 後期 | 前期 | 後期 | |||||||||||||
第1段階 | 第2段階 | 第3段階 | 第4段階 | |||||||||||||||||
変容期 | 安定期 | 変容期 | 安定期 |
「変容期」と「安定期」をくり返して24歳で発達を遂げるという考え方です。
「敏感期」とは?
発達は連続していくもので、基礎の第1段階がとても重要です。
この基礎の時期の発達に欠かせないのが「敏感期」です。
敏感期とは?
子どもがある能力を身につけるために、外界のあるものに特に敏感になり、子ども自ら主体的に働きかける、ある一定の時期のこと。
「敏感期」の吸収力は すさまじいものです。
ただ この時期を過ぎてしまうと吸収力が落ちてしまうので、この大事な時期を有効に使うことがとても重要です。
敏感期について、くわしくはこちらの記事をぜひご覧ください。
「敏感期」は 大きく6つに分類されます。
- 運動の敏感期
- 秩序の敏感期
- 感覚の敏感期
- 言語の敏感期
- 数の敏感期
- 文化の敏感期
この「敏感期」に連動したものが、モンテッソーリ教育の5分野です。
- 運動の敏感期 ー 日常生活の練習
- 秩序の敏感期 ー 該当する教育はありません
- 感覚の敏感期 ー 感覚教育
- 言語の敏感期 ー 言語教育
- 数の敏感期 ー 算数教育
- 文化の敏感期 ー 文化教育
こういった教育を通じて 子どもは成長していきます。
モンテッソーリ教育の5分野
子どもの「敏感期」に合わせて、モンテッソーリ教育では5つの段階に分けています。
《モンテッソーリ教育の5分野》
日常生活の練習(運動の敏感期) | ||||
1つ1つの動きを孤立して伝えることにより、自分の意思どおりに動く体をつくる | ||||
↓ | ||||
感覚教育(感覚の敏感期) | ||||
・感覚を個別に刺激し、無意識に吸収した感覚印象を整理する ・ペアリング(対にする)、グレーディング(段階づける)、ソーティング(分類する)をすることで知性を覚醒する |
||||
↓ | ↓ | ↓ | ||
知的教育 | ||||
言語教育 (言葉の敏感期) |
算数教育 (数の敏感期) |
文化教育 (文化の敏感期) |
モンテッソーリ教育の5分野それぞれについて、順番にみていきましょう。
日常生活の練習( 運動の敏感期 )
モンテッソーリ教育の基礎となるのが「日常生活の練習」です。
くわしくはこちらの記事をご覧ください。
感覚教育( 感覚の敏感期 )
「日常生活の練習」という土台が築かれると、次の段階である「感覚教育」へ進んでいきます。
《モンテッソーリ教育の5分野》
日常生活の練習(運動の敏感期) | ||||
↓ | ||||
感覚教育(感覚の敏感期) | ||||
この部分 | ||||
↓ | ↓ | ↓ | ||
知的教育 |
||||
言語教育 (言葉の敏感期) |
算数教育 (数の敏感期) |
文化教育 (文化の敏感期) |
くわしくはこちらの記事をご覧ください。
言語教育( 言語の敏感期 )
土台となる「日常生活の練習」「感覚教育」を経験し、言葉への興味が強くなってくると「言語教育」へ進んでいきます。
《モンテッソーリ教育の5分野》
日常生活の練習(運動の敏感期) | ||||
↓ | ||||
感覚教育(感覚の敏感期) | ||||
↓ | ↓ | ↓ | ||
知的教育 | ||||
言語教育 (言葉の敏感期) |
算数教育 (数の敏感期) |
文化教育 (文化の敏感期) |
||
この部分 |
くわしくはこちらの記事をご覧ください。
算数教育( 数の敏感期 )
数字への興味が出てきたら、算数教育へと進みます。
これは、3歳になったら強制的に始める、というようなものではありません。
子どもの興味に合わせて環境を提供していきます。
《モンテッソーリ教育の5分野》
日常生活の練習(運動の敏感期) | ||||
↓ | ||||
感覚教育(感覚の敏感期) | ||||
↓ | ↓ | ↓ | ||
知的教育 | ||||
言語教育 (言葉の敏感期) |
算数教育 (数の敏感期) |
文化教育 (文化の敏感期) |
||
この部分 |
くわしくはこちらの記事をご覧ください。
文化教育( 文化の敏感期 )
言葉と数以外の範囲に対して活動していく「文化教育」についてみていきましょう。
《モンテッソーリ教育の5分野》
日常生活の練習(運動の敏感期) | ||||
↓ | ||||
感覚教育(感覚の敏感期) | ||||
↓ | ↓ | ↓ | ||
知的教育 | ||||
言語教育 (言葉の敏感期) |
算数教育 (数の敏感期) |
文化教育 (文化の敏感期) |
||
この部分 |
くわしくはこちらの記事をご覧ください。
小学生のモンテッソーリ教育
「発達の4段階」で図解したように、モンテッソーリ教育は 24歳で発達を遂げるという考え方です。
日本では幼児教育の印象が強いですが、海外ではモンテッソーリ教育を実践する小学校、中学校、高校があります。
中には、モンテッソーリ教育を取り入れている大学もあるようです。
ここでは 日本ではまだ触れることの少ない、小学生のモンテッソーリ教育についてみていきましょう。
【まとめ】モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育とは、子どもが本来もっている「成長する力」を最大限に発揮できるようにする教育方法です。
そのために
- 子どもと大人のちがいを理解する
- 子どもの興味に合った環境を提供する
- 見守り、必要なときに手助けをする
ということを重視しています。
この記事では、モンテッソーリ教育について体系的に整理してまとめました。
モンテッソーリ教育に興味をもち、「もっとくわしく知りたい!」という方のお役に立てば嬉しいです。
参考文献
最後に この記事を書くために参考にした書籍などを記載しておきます。
相良敦子「お母さんの「敏感期」 モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる」文文藝春秋,1994年1月
相良敦子「モンテッソーリ教育を受けた子どもたち」河出書房新社,2009年12月
相良敦子「モンテッソーリの幼児教育 ママ、ひとりでするのを手伝ってね!」講談社,1985年6月
松浦公紀「モンテッソーリ教育が見守る子どもの学び」学研,2004年6月
松浦公紀「0〜3歳のちから モンテッソーリ教育が見守る乳幼児の育ちと大人の心得」学研,2005年6月
松浦広紀 監修「モンテッソーリ教育に学ぶ子どもの見方」