「性教育」と聞くと、戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか?
- 自分自身がちゃんと教えてもらった記憶がない
- 何をどう教えたらいいのかよく分からない…
- 自然に身につくもんじゃないの?
価値観が多様化する現在、「性教育」の重要性は大きくなっています。
この記事では、その理由や家庭での具体的な性教育の進め方をご紹介します。
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子どもへの性教育とは?
「性教育」は単純に生殖について教えることではありません。
性教育とは「いのち、からだ、健康」について考えることです。
国際的には、「性教育は人権教育」と認識されていて
- 男女の体の仕組み
- 性の多様性
- ジェンダー平等
- コミュニケーション
- 性同意
など幅広いテーマを幼い頃から体系的に、発達段階に応じて、くり返し、より深く学ぶことが推奨されています。
学ぶことで「私は私のままでいい」という自己肯定感や自己受容を得ることができます。
そして、意見の違う相手であっても尊重できる力が育まれるのです。
- 「性」は、人間のアイデンティティーや幸せにもつながる大切なこと
- 「性」を語ることは人間関係を語ること
- 「性」は 自然にわかるものではなく、意識的に学習する必要がある
ますます価値観が多様化する、これからの世の中。
その中で幸せに生きていくために、「性教育」は必須の「教養・知性」ということです。
親である私たちも「性」に対しての認識をアップデートして、子どもと関わっていくことが大切なんですね。
性教育のメリット
「早い段階で性教育をすると、性に対して奔放になるのではないか…」
という心配をされるかもしれませんが、実際の統計結果はちがうようです。
正しい知識を身につけることで、
- 低年齢での妊娠
- 望まない妊娠による中絶
- 性感染症
- 性犯罪の被害
などを減らすことができます。
また、自分の体や性に対して肯定的に捉えられるようになり、自己肯定感も高まります。
結果として、
- 性犯罪から自分を守る力を身につける
- 子ども同士でも相手を性的に傷つけないようにする
という行動にも繋がります。
性教育いつからはじめるの?
結論、「性教育は 0歳からはじめられる!」です。
0歳からでも
- 「おしり拭くよ〜」と声掛けする
- スキンシップで愛情を伝える
ことで、自分の体の大切さを実感できます。
言葉でコミュニケーションがとれるようになれば、さらに性教育を進めることができます。
つまり、「性教育=人権教育」なので、早すぎるということはないのです。
国際的には以下のようなガイダンスがあるようです。
ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)やWHO(世界保健機関)などが作成した「国際セクシャリティ教育ガイダンス」では、5歳から年齢別にさまざまな学習目標が設定されています。
引用:「マンガでわかる 子どもと一緒に楽しく学ぶ性教育」遠見才希子 18ページより抜粋
ずっと隠されてきたのに、思春期に突然、性の話をされるのは抵抗があるものです。
実体験から言うと、3歳〜6歳くらいの時期からはじめるのがおすすめ。
子どもが性に興味を持つ時期で、しかも恥ずかしがらずに吸収してくれるからです。
- 年齢に合わせて、必要な知識を伝えていく
- 思春期前までに基本的な知識を伝えておくのがおすすめ
性教育は、触れたらいけないタブーな内容ではありません。
科学的な生物の授業として、またお互いを尊重し合う人権について学ぶ場として、堂々と行われています。
子どもが体や性に対して興味を見せたら、チャンスです。
絵本などを使って正しい知識を伝えていきましょう。
「5歳になったから教えないと!」
と意気込みすぎず、子どもの興味や成長段階、理解度に合わせて話してみるのがよさそうですね。
どうして家庭でも教える必要があるの?
日本の学校での性教育は、国際的な視点から見るとまだ遅れているところも多いようです。
また、現在の発展したネット社会では、玉石混交の膨大な性の情報に子どもが手軽に触れることができる状態です。
学校に任せきりでは手遅れになってしまうこともあるかもしれません。
家庭でも子どもが興味をもったり、話題にあがったりしたときに自然と話せるようにするのがよさそうです。
家庭で「性」について話す場をふだんから持つようにすることで
- 子どもが「性」について不安や疑問を感じたとき
- 性被害にあってしまったとき
子どもを守り、救うことにもつながります。
幼少期の性教育|具体的にどんなことを教えるの?
ここまでご紹介したように、幼少期に「性」の基本知識を身につけることが大切です。
※ 幼少期とは「1歳から、思春期になる前の12歳ごろまでの時期」のこと
「でも…性教育って、何をどう教えたらいいの?」
思春期前までに、特におさえておきたいポイントはこの3つ。
幅広い性教育の内容を幼少期だけで網羅するのはとてもムリです。
年齢に合わせて、段階を踏んで、何度もくり返し伝えていくことが必要。
その中でも、特に基本となるポイント3つを詳しくご紹介します。
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① プライベートゾーン
最近よく耳にするようになった「プライベートゾーン」とは具体的にどこのことでしょうか。
性器、おしり、胸、口
「水着や下着で隠れるところ」と言われたりもします。
この「プライベートゾーン」に対する基本的な考え方を幼児期から伝えていくことが、その後の性教育にも繋がっていきます。
《 プライベートゾーンの基本的な考え方 》
- 自分の体のどこに、誰が、どのように触れることができるのか、自分で決められる
- イヤなときはイヤと伝える
- 見るのも触るのも自分だけ
- 家族であっても、触れるときは確認する
- 相手に対しても同じ
- プライベートパーツをじろじろ見たり、勝手に触らない
かわいい子どもには思わず触りたくなりますよね。
でも、親が意識して線引きすることが必要です。
プライベートパーツを勝手に見たり触るのが「好き」の表現だと誤って理解してしまうかもしれないからです。
「プライベートゾーン」は なぜ大事なの?
子どもにどのように説明しますか?
- 子どもを産むこと
- 大切な人と愛情を伝え合うコミュニケーション
- 健康や快楽
このように、「プライベートゾーン」は人が幸せに生きる上で、とても大切なことと関係がある場所だからです。
子どもの年齢や成長段階に合わせて、絵本などを使って少しずつ伝えていきましょう。
② 体の仕組み
「男の人の体」「女の人の体」の仕組みや特徴について、基本的なことを幼少期に伝えておくことがおすすめです。
思春期になる前だと抵抗感もなく、スムーズに吸収してくれます。
正式な名称を使い、説明は分かりやすく
《 例 》
「女の子の体には、おしっこの穴とうんちの穴の間に膣という穴があるよ」
成長につれて変化する体について、なんとなく理解しておく
《 例 》
「大きくなったらお父さんみたいに毛が生えてくるよ」
「大きくなるとおっぱいがふくらんでくるよ」
体の仕組みは、絵本など分かりやすく図解されているものを使うのがおすすめです。
段階を踏んで、「生理」や「精通」についての知識も事前に伝えておくと、実際に体験したときに戸惑うことも少なくなります。
③ 性の多様性
「男の子だから泣かないの!」
「女の子はそんな乱暴な言葉づかいしないの!」
つい口にしたり、耳にしたりする言葉。
- ジェンダー(社会や文化の中でつくられる性)の価値観を押しつけていないか?
- 「自分らしく」とは何だろう?
そんな価値観を問われることも増えてきました。
価値観が多様化する世の中では、「性の多様性」についても理解することが必要です。
内容は、大きく4つに分けて整理されています。
- 体の性
- 心の性
- 好きになる性
- 自分を表現するための性
幼少期にすべてを詳しく伝えるのは難しい内容です。
- 体は女の子として生まれたけど、それに違和感を感じている子もいる
- 男の子を好きになる男の子もいる
- 男らしい格好をするのが好きな女の子もいる
子どもと会話しながら、このような内容を少しずつ伝えていきましょう。
まわりからの影響で
「男の子なのに人形遊びが好きでおかしい」
「女の子なのに外で遊んでばっかり」
と子どもが言うこともあります。
そんなときは「本当にそうかな?」と問いかけ、ジェンダーについて考えるきっかけにするのもいいですね。
子どもに伝えるときのポイント
子どもへの性教育。
ポイントを押さえて、子どもに伝えていきましょう。
内容を詳しく見ていきましょう。
① 淡々と事実を伝える
「赤ちゃんはどうやってできたの?」
「…お父さんとお母さんが仲良くしてたらできたんだよ」
こんなふうに「性」についての話となると、ついつい恥ずかしくなって誤魔化してしまった…ということはありませんか?
子どもが「性」に対して興味を持ったのはチャンスです。
言葉だけでは説明しにくいので、絵本などの分かりやすい図を使って、生物の授業のように淡々と体の仕組みを説明しましょう。
最初は理解してなさそうでも、興味を示したときにくり返し伝えることで少しずつ理解が深まります。
② 価値観をくっつけない
生物的な体の仕組みとして、「性」について伝えるときに気をつけること。
それは
- 出産は素晴らしい!
- 精液は汚い
などの個人的な価値観は入れずに伝えることです。
ポジティブにしろ、ネガティブにしろ、価値観を伝えてしまうことで、子どもにプレッシャーをかけてしまうことになるからです。
どう感じて成長していくかは子どもに任せます。
親は、科学的な仕組みとして生物の機能を淡々と説明するように心がけましょう。
③ 子どもが興味を示したときに答える
性教育について知識を身につけ、重要性を理解すればするほど、
「子どもにしっかり伝えないと!」
と意気込んでしまいがちです。
性教育はとても大切ですが、親の気持ちは少し置いといて子どもを観察しましょう。
子どもが興味を持っていないのに、急に「性」について伝えても理解してもらえないものです。
親は知識をインプットして、伝える練習をして、時機を待ちましょう。
子どもから性について疑問が出てきたり、自分の体に興味を持つようになったりしたらチャンスです。
子どもの理解度を見ながら少しずつ伝えていきましょう。
④ 幼い異性きょうだいの場合、本人が嫌がらなければ同時に伝えてOK
小学校低学年くらいまでなら、興味を示したときに男女一緒に「性」について伝えるのもおすすめです。
伝えるのは、必ず全員に確認をとってからにします。
《 例 》
「今から男の子の体について説明するけど、〇〇ちゃんも一緒に聞いてもいいかな?」
男女の体の仕組みは、それぞれが知っておくべき内容です。
ただ、10歳くらいになると性に対してより敏感になるので、低年齢のときだけにしましょう。
⑤ 高学年以上は同性の親が伝える
高学年になると、思春期に片足を突っ込んだ状態です。
「性」についても敏感になってきます。
性についてより詳しく理解するチャンスでもありますが、異性の親から伝えられるのは反発や嫌悪感を抱くものです。
自分がそれくらいの年齢だったときを思い出してみてください、……ね?
なので、夫婦間で話し合って「性」について大切なことを同性同士で伝えてもらうようにしましょう。
子どもと同性の親がいない場合は、信頼できる友人やきょうだい、親戚に頼むなどの方法もあります。
子どもへの性教育 | 親が意識するポイント
おうちで性教育をする上で、親が気をつけるポイントは3つあります。
順番に詳しく見ていきましょう。
① 正しい情報にアップデートする
数十年前、性について学ぶのは 学校の保健の授業やテレビ・マンガ、友達から、という感じだったのではないでしょうか。
私自身もなんとなく身につけたというのが実感。
親が正しい情報を身につけることで、ネガティブからポジティブな伝え方へ変えることができます。
月経の血がついたショーツや夢精などで精液がついたパンツを「汚い」と言ってしまったりすることは、「性」に対してネガティブなイメージを与えてしまいます。
ネガティブなイメージを持つことで正しい知識を身につけられず、結局は子ども自身が傷ついてしまう可能性もあります。
幸せな人生を歩むためには、「性」について正しく学び、言葉で伝え合うこと、子どもと話し合うことが大切です。
性についての無知・無理解は無謀な性行動を生み出す。
性についてしっかり学ぶことは慎重な性行動、幸せにつながる性行動を生み出す。
引用:「おうち性教育はじめます 一番やさしい!防犯・SEX・命の伝え方」 28ページ
② 日常から親子の信頼関係を築く
信頼関係がないと、気軽に質問したり、本当に困ったときに相談したりすることってできませんよね。
難しく考えず、まずは基本的なスキンシップでコミュニケーションがとれていれば大丈夫です。
- 子どもと触れ合う
- 愛おしいものとして、なでたり、抱きしめたり、手をつなぐ
- プライベートパーツは触らない
- 子どもが嫌がっているときは触らない
- 思春期までが目安
そして、スキンシップ以外のコミュニケーションでも、信頼関係を築いていくことが大切です。
- 子どもの話を聴く
- 子どもの気持ちを大切にする
- 子どものことを認める
言われてみれば、人間同士の付き合いとして当たり前のことですよね。
- 子どもの話を聴く
まずは子どもと向き合い、話を最後まで聴く姿勢が大切です。
- 子どもと同じ目線の高さで聴く
- 手を止めて、子どものほうに体を向ける
- 相づちや表情などで聴いていることを伝える
途中で口を挟まずに、受けとめることを意識しましょう。
- 子どもの気持ちを大切にする
どうしても親は子どもに対して、アドバイスや指導をしてしまいがちです。
- よかれと思って、親の価値観を押しつけていないか?
- 未熟と思って、頭ごなしに否定していないか?
自分自身に問いかけながら、まずは子どもの気持ちを受けとめましょう。
- 子どものことを認める
どんなことがあっても自分を認めてくれる人がいることは、子どもにとって大きな安心感になります。
①②の内容を実践して、ふだんのコミュニケーションで「あなたのことが大切だよ」と伝えられる言動を意識してみましょう。
③ 大人も一緒に学ぶ姿勢をもつ
親だって人間です。
思わず叱ってしまったり、戸惑ってうまく説明できなかったりすることもあります。
- カンペキを目指す必要はなく、等身大でいい
- 今までの自分の言動がよくないと思ったら、謝ったらいい
- 誤った情報を伝えていたら、伝え直したらいい
- あいまいな場合は、正直に分からないと伝えたらいい
- 分からないことは一緒に調べたらいい
こんな風に気楽な気持ちで、子どもと一緒に学んでいきましょう。
できることからやればいいんです。
そして、知識を仕入れたからといって、家庭で「性教育を教える時間を設定しよう」と意気込みすぎなくても大丈夫です。
- 子どもから性に関する疑問があったときに話す
- 子どもの様子を観察して、少し話してみる
- 性に関する話題が出たときに、話し合う
準備しておいて、チャンスがあったら話す。
そのために、日常的に子どもが親に話しやすい雰囲気でいることが大切です。
まとめ 家庭でできる、子どもの性教育
これからの世の中を生きていくために、避けることはできない「性教育」。
- 親が正しい情報にアップデートする
- ふだんから子どもとの信頼関係を築く
- 子どもの興味、成長段階に合わせて話し合う
こんな感じで、おうちでの「性教育」を少しずつ始めてみませんか?
参考文献
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