金ビーズは、十進法を理解するために使う教具です。
「1、10、100、1000の紹介」で金ビーズと数字カードに慣れ親しんだら、次の活動に進んでみましょう。
ここでは「 1〜1000の配列」のお仕事について詳しくご紹介します。
モンテッソーリの「金ビーズ」とは?
金ビーズの特徴や効果について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
手づくりに興味がある方はこちらも参考にしてみてください↓
モンテッソーリの金ビーズのお仕事「1〜1000の配列」
「1〜1000の配列」の活動は、3つの段階を踏んで進めていきます。
この活動を通して、
- 十進法の位の変わり方を理解する
- 「空位の0」(数字の抽象性)を理解する
- 数の基本概念(量、数詞、数字の一致)を身につける
を目指します。
詳しい内容は、それぞれのお仕事で説明していきます。
① 1〜1000の金ビーズの配列
この活動の目的は2つです。
- 金ビーズの並べ方を理解する
- 位が変わると、金ビーズの形が変わる
用意する金ビーズは、こちら。
- 1の金ビーズ: 9個
- 10の金ビーズ: 9本
- 100の金ビーズ: 9枚
- 1000の金ビーズ: 1個
提示について詳しく知りたい方は、 こちらをぜひご覧ください。
- 1、10、100、1000の金ビーズをマットに並べる
それぞれの金ビーズを1つずつ並べます。
並べるときに「これはいくつ?」と確認しながら、置いていきます。
- 1の金ビーズをすべて並べる
「1の金ビーズを並べてみるね」と伝え、間隔をあけて縦に並べます。
1が10の金ビーズの先頭になるように置く
並べたら「数えてみるね。1、2、3、…9」と指さしながら数えます。
- 10の金ビーズをすべて並べる
1の金ビーズを数え終わったら「9の次は?」と質問します。
「10はどこ?」と質問し、子どもに指さしてもらいます。
「10になると形が変わったね。置く場所も変わったね。」と、位が変わると金ビーズの形も変わることを意識づけます。
「次は10を並べてみるね」と伝え、10の金ビーズを並べます。
並べ終わったら「数えてみようか。10、20、30…」と子どもと一緒に数えます。
「10、20、30、…」と通常の読み方で言う
「1、10、100、1000の紹介」では「1じゅう、2じゅう、3じゅう、…10じゅう」と強調した数え方をしましたが、この活動では通常の読み方に慣らしていきます。
- 100の金ビーズをすべて並べる
10の金ビーズを数え終わったら「90の次は?」と質問します。
「100はどこ?」と質問し、子どもに指さしてもらいます。
「100になるとまた10のときと形が変わったね。置く場所も変わるね。」と位が変わると金ビーズの形も変わることを再度意識づけます。
「次は100を並べてみるね」と伝え、100の金ビーズを並べます。
並べ終わったら「数えてみようか。100、200、300…」と子どもと一緒に数えます。
100の位も、通常の読み方で数えます。「3ひゃく」のような強調した読み方はしません。
- 1000の金ビーズを確認する
100の金ビーズを数え終わったら「900の次は?」と質問します。
「1000はどこ?」と質問し、子どもに指さしてもらいます。
「1000になるとまた100のときと形が変わったね。置く場所も変わるね。」と位が変わると金ビーズの形も変わることを再度意識づけます。
- 終わったら、片づける
提示のポイントは
- 1つひとつの動作をゆっくり(8倍スロー)
- 難しいところはくり返す
- 子どもが見ているか確認しながら進める
です。
子どもが苦戦していたら、一息ついたタイミングで 苦戦ポイントに絞ってゆっくり提示してみましょう。
② 1〜1000の金ビーズの構成
量と数詞の一致を目的とする活動です。
《 用意するもの 》
- マット(大)、マット(小)
- 1000までの金ビーズ
- 金ビーズを入れるトレー
- 金ビーズを1000まで並べる
- トレーの説明をする
「このトレーの上に、伝えた数の金ビーズをのせてきてください」と伝えます。
「1のビーズはここ」 | 「10のビーズはここ」 |
と、金ビーズの置き場所を伝えます。
「ビーズを持ってくるときのお約束があります」
「ビーズは必ず1番上から持ってきてください」
と、マットの金ビーズの取り方も伝えます。
- 持ってきてもらう金ビーズの数を伝える
「”300″持ってきてください」と伝えます。
「言ってみて」と子どもが把握しているか確認します。
最初は分かりやすい数字から始める
慣れてきたら、“582” や “1704” のように難易度を上げていきます。
- 持ってきてもらった金ビーズを確認する
子どもが持ってきてくれたら「いくつ持ってきてくれましたか?」と確認します。
「持ってこれたか数えてみましょう」と伝え、マット(小)の上に置きながら数えます。
「100、200、300」と、上に重ねて数える |
「ちゃんと持ってこれたね」と伝え、
「じゃあ戻してきてください」と金ビーズをトレーに入れ、マットに戻してきてもらいます。
このようにして、1つの位を持ってきてもらうことをくり返します。
- 1つの位に慣れてきたら、難易度を上げる
子どもが慣れてきたら、複数の位を持ってきてもらいます。
例えば「“200” と “30” と “5” を持ってきてください」と伝えます。
伝えたあと「言ってみて」と子どもが把握したか確認します。
持ってきてもらった数は、1の位から順に声に出して数えながら確認します。
1の金ビーズは縦に並べる |
10の金ビーズは横に並べる |
100の金ビーズは上に重ねる |
マットに並べたら、指さしながら再度確認します。
「200と」 | 「30と」 | 「5」 |
「持ってこれたね」と伝えます。
トレーに入れ戻し、「じゃあ戻してきてください」と子どもに渡します。
- 終わったら、片づける
子どもの理解度を見ながら、難易度を徐々に上げていきましょう。
- 最初は1つの位だけ(3、50、600、など)
- 位と位の間に「と」を入れて伝える(50と3、300と60と8、など)
- 位と位の間の「と」を抜いて伝える(724、1253、など)
③ 数字カードの配列と構成
この活動の目的は2つです。
- 「空位の0」(数字の抽象性)を理解する
- 数の基本概念(量と数詞と数字の一致)を身につける
《 用意するもの 》
- マット(大) 2枚
- 1000までの金ビーズ
- 1000までの数字カード
- 金ビーズを入れるトレー
- 金ビーズを1000まで並べる
- 別のマットに数字カードを1000まで並べる
- 金ビーズと同じ数字を持ってきてもらう
「金ビーズをトレーの中に入れるから、それと同じ数字カードを持ってきてください」と伝えます。(この提示では “24” を入れています)
1の位から入れる | 次に10の位 |
金のビーズを持ってきたら「いくつある?」と子どもに質問します。
「じゃあ同じ数字カードを取ってきてください」と伝えます。
「数字カードはここに置いてね」と場所も明示します。
- 持ってきてもらった数字を確認する
持ってきてもらったら「じゃあ数えてみるね」と伝えます。
金ビーズから数えます。
「1、2、3、4」と声に出して数えながら並べます。
1の位から数える | 次に10の位 |
マットの下の余白で数えます。
次に、数字カードの数を声に出して確認します。
数字カードを1の位から、ビーズの下に並べる |
「お母さんは “24” の金ビーズを入れました」
「〇〇ちゃんも数字カードを “24” 持ってきてくれました」
と、数字を言いながらカードを重ねます。
「同じにできたね」と確認し、金ビーズと数字カードをトレーに入れ、元に戻してきてもらいます。
- 金ビーズと数字カードを持ってきてもらう
「今から言う数と同じ金ビーズと数字カードを持ってきてください」
「最初は金ビーズから持ってきてね」
と伝えます。
「“35” 持ってきてください。“35” 言ってみて。」と子どもが把握したか確認します。
最初に金ビーズを入れ、 | 次に数字カードを入れる |
- 持ってきてもらった金ビーズと数字カードを確認する
持ってきてもらったら「いくつ持ってきましたか?」と確認し、「数えてみようね」と伝えます。
金ビーズから数え、 | 次に数字カードを数える |
数字カードを並べたら「30、5」と声に出しながら重ねます。
「〇〇ちゃんは金ビーズを “35” 持ってきました」
「数字カードも “35” 持ってきました」
とそれぞれ指さしながら確認します。
- 終わったら、片づける
2桁の数に慣れたら、3桁→4桁と徐々に数を大きくしていきます。
そして、「空位の0」を体験してみましょう。
「無」という意味の0ではなく、位をあらわす空位の0
例えば「1032」の百の位の「0」が「空位の0」となります。
100の金ビーズをトレーに入れない
||
百の位の数字カードは「0」になる
このような体験を通して、子どもは「空位の0」を理解していきます。
また、数字の抽象性をより理解できるように「1999」という数もやってみましょう。
- マットにある金ビーズは、すべてをトレーにのせる
- カードは「1000」と「900」と「90」と「9」だけトレーにのせる
子どもにとって「金ビーズは全部のせるのに、数字カードは全部のせない」のはふしぎなことです。
この活動を通して「金ビーズという量が具体的なものであるのに対して、数字カードは抽象的なもの」ということを理解していきます。
脳が発達中の子どもにとって、いきなり抽象的なことを理解するのは難しいことです。
「具体から抽象」という子どもの発達の流れに沿って段階を踏んでいくのがモンテッソーリ教育の特徴です。
「1〜1000の配列」の次は?
子どもが金ビーズと数字カードで十進法の基本を理解したら、子どもの興味に合わせて順番に次の活動に進んでいきましょう。
金ビーズを含む算数教育の全体の流れは、《算数教育の全体像》を参考にしてみてください。
《 金ビーズのお仕事の流れ 》
- 1、10、100、1000の紹介
- 1〜1000の配列の構成 ← 今ここ
- セガン板
- たし算
- かけ算
- ひき算
- わり算
セガン板
この活動で、11〜99の連続する数字を理解します。
子どもにとって難しい
- 19の次は20、29の次は30
- 「10」の「0」が隠れて、そこに「1」がきて「11」になる
という考え方も身につけていきます。
https://okigarublog.com/seganban2/
まとめ モンテッソーリの金ビーズ「1〜1000の配列」
「1、10、100、1000の紹介」と今回の「1〜1000の配列」の活動で、十進法の基本的な考え方を理解していきます。
《 十進法の基本 》
- 位の変わり方
1が10集まると次の位10に変わる
10が10集まると次の位100に変わる
100が10集まると次の位1000に変わる
- 空位の0
「1032」「1405」の「0」は、何も無いという意味ではなく「空位の0」
金ビーズと数字カードで十進法の基本に慣れ親しんだら、次の段階へ進んでみましょう。
- セガン板(11〜99の連続数)
- 加減乗除(たし算、ひき算、かけ残、わり算)