「幾何タンス」で図形に慣れ親しんできたら、「幾何学立体」の活動に誘ってみましょう。
モンテッソーリの「幾何学立体」とは?
幾何学立体は、モンテッソーリの感覚教育で使う教具の1つです。
感覚教具の中で、視覚に働きかける教具を「視覚教具」と言います。
幾何学立体は、この視覚教具に分類されるものです。
刺激する 感覚器官 |
教具名 | 識別する内容 |
視覚 (目) |
円柱さし | 大小、高低、太細 |
ピンクタワー | 大きさ(大小) | |
茶色の階段 | 太さ(太細) | |
長さの棒(赤い棒) | 長さ(長短) | |
色つき円柱 | 円柱さしと同じ | |
色板Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ | 色の種類、色の明暗(濃淡) | |
幾何たんす | いろいろな平面図形 | |
幾何学立体 | 基本的な幾何学立体 | |
構成三角形 | いろいろな三角形 | |
二項式 | 色と大きさの要素の応用 | |
三項式 | 色と大きさの要素の応用 | |
触覚
(手、皮膚) |
触覚板・布合わせ | 手触り、粗さ滑らかさ |
温覚筒 | 熱い、冷たい(温度感覚) | |
温覚板 | 熱い、冷たい(温度感覚) | |
重量板 | 軽重(重量感覚) | |
圧覚筒 | 圧力(反発力)の強弱 | |
実体認識袋 | 物体の知覚(実体認識感覚) | |
聴覚 (耳) |
雑音筒 | 音(雑音)の強弱 |
音感ベル | 楽音の高低 | |
味覚 (舌) |
味覚びん | 基本的な味の種類 |
嗅覚 (鼻) |
嗅覚筒 | いろいろな具体物の匂い |
参考:松浦公紀「モンテッソーリ教育が見守る子どもの学び」学研,2004年6月,P77
「幾何学立体」の特徴
幾何学立体の活動では、10種類の立体と5枚の投影板を使います。
10種類の幾何学立体 | 5枚の投影板 |
それぞれの詳細はこんな感じです。
《 10種類の立体 》
立方体、直方体、三角柱、円柱、四角錐、三角錐、円錐、球体、楕円体、卵形立体
《 5枚の投影板 》
円形、正方形、長方形、正三角形、二等辺三角形
立体、投影板はそれぞれ同じ図形の面がぴったり合うように設計されています。
同じ図形の面がぴったり | 立体と投影板 |
立体と投影板の色はすべて青色に統一されています。
これは子どもが立体の形に集中できるようにするためです。
「幾何学立体」のねらい
ねらいは大きく2つあります。
- 立体の形を認識する
- 立体は面で構成されていることを認識する
- 立体の形を認識する
幾何学立体に手で触れ、目で見て、転がしてみることで、子どもは立体というものを認識していきます。
- 立体は面で構成されていることを認識する
立体の全体的な形を認識したら、面という部分に視点を移していきます。
例えば、立方体と直方体はちがう立体ですが「正方形」という同じ図形を持っています。
異なる立体 | 一部分は同じ図形 | ぴったり重なる |
このようにして、ちがう立体だけど、面という一部分だけは同じになるということを体験していきます。
ふだんの生活では、この一部分を認識することはなかなかできません。
モンテッソーリ教具を使った活動では、一部分に注目できるように工夫されているのです。
これら2つのねらいは、この先に出会う「算数教育」の土台を築くことにもつながっています。
この段階では、まだ子どもには算数教育として教えません。
しかし、算数的な要素は子どもの中に体験として蓄積されます。
算数への興味が開花したときに、この体験と数学の概念を紐づけていくのです。
子どもからのサイン!「幾何学立体」のはじめどき
はじめるタイミングは「敏感期」に合わせるのがポイントです。
幾何学立体は視覚教具。
子どもの視覚がより研ぎ澄まされているときにはじめるのがおすすめです。
具体的な子どもからのサインはこんな感じ。
- 見比べるようになってきた
(例)同じ大きさの積み木だけを集める、切り分けたケーキの大きい方を食べたがる、など - 「幾何タンス」などで図形を見分ける力がついてきた
年齢でいうと3歳〜3歳半ごろがはじめる目安です。
ただ、年齢にこだわらなくても大丈夫です。
子どもは そのときの成長に1番必要なものに強く興味をもちます。
子どもを観察して、ちょうどよいタイミングで 子どもに合ったお仕事を用意していきましょう。
購入やレンタルもできる「幾何学立体」
幾何学立体は手づくりするのが難しい教具です。
おうちでやってみるなら、購入かレンタルがあります。
- 購入するなら
フリマアプリで中古品を購入するのもお手頃価格でおすすめです。
- レンタルするなら
モンテッソーリの「幾何学立体」の活動
実際に幾何学立体を使ってどのように活動していくのかご紹介します。
幾何学立体の基本提示
提示について詳しく知りたい方は、 こちらをぜひご覧ください。
まず「幾何学立体のお仕事やってみようか」とお仕事の名前を紹介します。
- 幾何学立体を並べる
同じ種類の立体ごとに並べます。
柱体 | 錐体 | 球体 |
- 幾何学立体を触ってみる
「触ってみるから、そのあと触ってみてね」と伝えます。
両手ですべての面をなでるように触ります。
「どんな感じだった?」と感想を聞いてみましょう。
同じように、球体や三角錐も触って感想を聞いてみます。
- 幾何学立体を転がして動き方を見せる
「転がしてみるから見ててね」と伝えます。
立方体 | 球体 | 円錐 |
1つ転がしたら「どうだった?」と聞いてみましょう。
3つほど提示を見せたら「やってみる?」と声かけして子どもにやってもらいます。
- 終わったら、片づける
提示のポイントは 3つあります。
- 1つひとつの動作をゆっくり(8倍スロー)
- 難しいところはくり返す
- 子どもが見ているか確認しながら進める
子どもが苦戦していたら、一息ついたタイミングで 苦戦ポイントに絞ってゆっくり提示してみましょう。
幾何学立体「重ねる」
幾何学立体に触れて慣れ親しんだら、重ねる活動にも誘ってみましょう。
この活動を通じて、ちがう立体でも同じ面があることを認識していきます。
- 幾何学立体を並べる
立体の面を触りながら「こういうところを“面”と言います」と伝えます。
- 立体の面と面を合わせる
「面と面をぴったり合わせるから見ててね」と伝えます。
立方体と直方体を手前に置く | 直方体の上に立方体を重ねる |
「ぴったりだね」と確認します。
「他にもぴったり合うのあるかな?」と聞いて子どもにもやってみてもらいます。
- 終わったら、片づける
この活動の発展として、目隠しをして触り同じ面を重ねるということもできます。
また、ミニサイズの幾何学立体と組み合わせて、幾何学立体と同じミニ立体を袋から取り出すという活動もできます。
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幾何学立体「投影板」の活動
幾何学立体に触れて、転がし、重ねる活動に慣れ親しんできたら、投影板を使った活動にも誘ってみましょう。
まず「“投影板”を使ってお仕事してみようね」と名前を紹介します。
- 幾何学立体と投影板を並べる
- 投影板と同じ面を持った幾何学立体を探す
「投影板とぴったり合うものを探していくからよく見ててね」と伝えます。
「ぴったりだね」と確認します。
2つほど提示してみせ「やってみる?」と声かけして子どもにもやってみてもらいます。
「まだ他にもぴったりのものを探せそうだね。やってみる?」と声かけします。
同じ面を持つものが他にもあることを意識させ、探すように促してみましょう。
- 終わったら、片づける
投影板を使って以下のようなことも気づくようになります。
- 四角形の中に円形がぴったり収まる
- 球体と円形の投影板の重なり
球体と円形の投影板 | 楕円体と円形の投影板 手に持って重なりを確認する |
幾何学立体の名称練習
幾何学立体の活動に十分慣れ親しんできたら、立体の名称を覚える活動もしてみましょう。
- いきなりやるのではなく、幾何学立体の活動に慣れ親しんでから行う
- こちらに注意を払わず、よく考えずにやるようなら、中断し後日にする
わが家の場合、名称練習はかなりあとの段階にやるとスムーズでした。
3歳ごろに初めて幾何学立体に触れましたが、名称練習をしたのは4歳を過ぎてからです。
子どもの様子を観察して興味を持ちそうならやってみる、という感じがよいと思います。
- これは◯◯です
最初は違いの大きな立方体と球体を使います。
名称に親しんできたら三角錐、直方体など順番に名称を紹介していきます。
まったく違う立体 | 触ってみる |
子どもにも触ってもらいます。
このように、見て、触って、五感を使って感じ取ってから名称を伝えます。
「これは“立方体”です。言ってみようか」と声に出して言ってもらいます。
同じようにして球体も名称を伝えます。
- ◯◯はどれですか?
「立方体はどれですか?」 「球体はどれですか?」… |
「球体はどれですか?」 「立方体はどれですか?」… |
位置や順番を変えて繰り返したずねます。
名称と立体が一致して、意識の中に定着させるのが目的です。
- これは何ですか?
立体の位置を変えて繰り返したずねます。
立体の名称を質問して、意識の中に定着したか確認します。
- 最初の名称練習には、まったく違う立体を使う
- 段階を踏んで同じ種類の立体の名称練習をする
最初は立方体と球体のように、数を少なくして名称練習します。
慣れてきたら三角錐を加える、直方体を加える、というように数を徐々に増やしていきましょう。
まとめ モンテッソーリの「幾何学立体」の活動
積み木が大好きな子どもなら、幾何学立体の活動も楽しんで取り組みます。
転がしてみたり、重ねてみたり、子どもが興味を持つ動きもたくさんあります。
子どもの興味を観察して誘ってみましょう。
わが家の次男は3歳になる前に、勝手にクローゼットから取り出して遊び始めました。
「形を認識してるな〜」と興味深く観察。
長男のときは「まだ提示もしてないのに〜」「教具で遊ばないで〜」という感じでしたが、2人目となると寛大になるものですね。
おうちモンテのおもしろさを改めて実感した場面でした。