基本的な演算を体感する活動の最後は、「わり算」です。
これまで同様、早期教育で教え込む！という訳ではなく、算数の概念に慣れ親しんでもらうことが目的です。
モンテッソーリの「わり算」とは？
わり算は、モンテッソーリの算数教育の活動の1つです。
ビーズという具体的なものを使って、抽象的な「わり算の概念」を理解していきます。
《算数教育の全体像》
| 数量概念の基本練習 | ||
| 10までの量と数の理解、数量の数字認識 | ||
| ●算数棒 ●砂数字板 ●算数棒と数字カード ●錐形棒 ●0あそび（数取りゲーム） ●数字と玉 ●算数棒による数の合成分解 ●色ビーズ並べ |
||
| ↓ | ||
| 十進法Ⅰ | ||
| 十進法の基本的構成の認識 | ||
| ●1、10、100、1000の紹介 ●1000の配列と構成 |
||
| ↓ | ↘︎ | |
| 十進法Ⅱ | 連続数の呼称と配列 | |
| 十進法による加減乗除の概念 | 連続数としての数の認識 | |
| ●両替あそび ●たし算 ●かけ算 ●ひき算 ●わり算 |
●セガン板 ○Ⅰ：11〜19までの数を数える ○Ⅱ：11〜99までの数を数える ●数字の配列 ○数字の消却 ○数字の埋め込み ○数字並べ ●100の鎖（短い鎖） ●1000の鎖（長い鎖） |
|
| ↓ | ||
| 十進法Ⅱとの並行練習 |
||
| 加減乗除の強化練習 |
||
| ●数字の配列 ○たし算 ○かけ算 ○ひき算 ○わり算 ●ビーズフレーム（小） ○たし算 ○ひき算 ●へびあそび ○たし算・検算 ○ひき算・検算 ●色ビーズ ○かけ算 |
||
| ↓ | ||
| 記憶による加法・減法・乗法・除法 | ||
| 記憶を伴う加減乗除の強化練習 | ||
参考：松浦公紀「モンテッソーリ教育が見守る子どもの学び」学研,2004年6月,P.108-109
「わり算」のねらい
この活動を通して、「わり算の考え方を身につける」ことを目指しています。
モンテッソーリ教育のわり算は、4桁からスタートするのが大きな特徴です。
「6÷3」のように1桁から始めると、わり算の概念を子どもに印象づけにくいからです。
- 位によって形が変わる具体的な「金ビーズ」を使い、量の大きさを感じられるようにする
- みんなに同じ数を分ける
- 分けられたら、一周回る
このようにすることで「同じ数ずつ分けること＝わり算」であることをより強く印象づけます。
手づくりもできる！モンテッソーリの「金ビーズ」
わり算の活動で使う「金ビーズ」は手づくりすることもできます。
出費は抑えられますが、ぜんぶ作るのはけっこう時間がかかります。
1000の金ビーズとか、たいへんでした…。
子どもが興味を持って、使ってくれているので結果よかったかなという感じ。
ハンドメイド好きな方は、よければやってみてください！
購入やレンタルもできる「金ビーズ」
手づくりするのはたいへん…。時間もないし…。
という方は購入やレンタルをすることもできます。
- 購入するなら
フリマアプリで中古品を購入するのもお手頃価格でおすすめです。
- レンタルするなら
モンテッソーリの「わり算」のお仕事
まずは、基本的な「割り切れる」わり算について体験します。
提示について詳しく知りたい方は、 こちらをぜひご覧ください。
わり算は、3人の子どもで取り組む活動です。
自宅で子ども1人に対して実施するときは
- 大人が変わりに2人目、3人目の役をする
- ぬいぐるみなどを2人目、3人目にして、大人がぬいぐるみの役をする
というやり方でやってみてください。
最初に「わり算のお仕事をしてみましょう」と名前を紹介します。
- 必要なものを準備する
 |
 |
 |
 |
- 1〜9000の数字カード(小) 3セット
→子ども3人がそれぞれ自分で並べる - 1〜9000の数字カード(大) 1セット
- 1〜9000の金ビーズ 1セット
- トレー3つ
- 大きな布（約70×100㎝）
数字カードは、自宅でもすぐに用意できます。
印刷→ラミネート→カットで完成です。
数字カード(大)
数字カード(小)
1000の金ビーズはすべて手づくりするのは大変なので、厚紙で組み立てるブロックをメルカリで購入して使いました。
準備ができたら「伝えた数の金ビーズと数字カードを持ってきてね」とやり方を伝えます。
- 大人が金ビーズと数字カード(大)を持ってくる
大きい布に並べてから「金ビーズを “6393” 持ってきました」と数字カードを1桁ずつ指さしながら数を確認します。
- それぞれの子どもに、同じ数のビーズを分ける
「今からみんなにこの金ビーズを分けてあげようと思います」
「分ける時は大きい数字から分けていきます」
と伝えます。
「〇〇ちゃんに1000、△△ちゃんにも1000、□□ちゃんにも1000」と言いながら、子どもの持つトレーに1000の金ビーズを1つずつ置いていきます。
「まだあるね」と1000の金ビーズがまだ布の上に残っているのを確認。
「1000、1000、1000」と言いながら、もう1度子どもに分けていきます。
「見て。ここにはなくなっちゃったね」と、布に1000の金ビーズがなくなったことを確認。
「なくなっちゃったときは、お母さんの周りを1周回ってくれますか」と伝え、トレーを持ったまま回ってもらいます。
1周回ることで「割り切れることができた」と言う認識につながる
「100の金ビーズも分けていくね」と伝えます。
「〇〇ちゃんに100、△△ちゃんにも100、□□ちゃんにも100」と言いながら、トレーに置いていきます。
布の上の100の金ビーズがなくなったら、
「なくなっちゃったね。なくなったら、どうするんだっけ？」と子どもに確認します。
子どもに大人の周りを一周回ってもらいます。
同様に、10の金ビーズ、1の金ビーズも子どもに分けていきます。
それぞれの金ビーズがなくなったら、大人の周りを一周回ってもらいます。
 |
 |
布の上のすべての金ビーズがなくなったら、
「みんなに分けちゃったので “6393” はありません」と言って数字カード(大)を裏返します。
- 子どもにトレーの金ビーズと同じ数の数字カード(小)を持ってきてもらう
「トレーにのっている金ビーズと同じ数のカードを自分が並べたところから持ってきてください」と子どもたちに伝えます。
「みんな持って来れたね。〇〇ちゃんはいくつ持ってきてくれましたか？」と確認。
数字カード(小)をもらい、布に並べます。
同様にして、他の子どもにも持ってきた数を確認して、数字カード(小)をもらいます。
「最初にお母さんが持ってきた…」と言いながら数字カード(大)を表にします 。
「 “6393” の金ビーズをみんなに同じ数だけ分けてあげました」
と、数字を読み上げながら、1桁ずつ指さして数を確認します。
「分けてあげた数は…」と言いながら、
 |
 |
 |
「2131」「2131」「2131」と数字カード(小)をそれぞれ1桁ずつ指さしながら読み上げて確認します。
「こういう風に “同じ数ずつ分けてあげること” をわり算といいます」と伝えます。
「言ってみようか」と誘い、「わり算」と声に出して確認します。
何度かくり返して慣れ親しんだら、わり算の記号「÷」や符号「＝」を使って式を作ってみます。
- 終わったら、片づける
わり算の活動は、他の演算とちがって「大人の周りを一周する」という動きがあります。
幼児期の子どもは動きを伴って学んでいくからです。
わり算で、基本的な演算の活動は終わりです。
具体的なものや動きで演算の考え方を体感したら、この先は抽象的な考え方へと進んでい行きます。
まとめ モンテッソーリの「わり算」
具体的な金ビーズと数字カードを使って取り組む、モンテッソーリの「わり算」。
- 4桁の数で取り組む
- 割れたら一周回る
というのが大きな特徴です。
モンテッソーリの活動を通して、「わり算は 同じ数ずつ分ける」ということを身につけていきます。
ここまで、具体的な金ビーズを使い、動きを伴って「たし算」「かけ算」「ひき算」「わり算」の考え方を体感してきました。
次の段階は、より抽象的な考え方へと進んでいきます。
